大阪・福島区の静かな路地に、蹲を照らす灯りがある。黒い外壁の前でふと足を止め、引き戸を開けると、板場を囲む白木のカウンターが目に入る。天井は低く、器の気配が漂い、どこかの割烹に迷い込んだかのような錯覚を覚える。ここはうどん屋だ。しかし、それだけではない。
おうどん蓬は、南森町の懐石料理店「宮本」を母体として生まれた一軒。日本料理の技と器遣い、もてなしの心をそのままに、うどんという形でその世界を開いた。
夜の席は「おきまり」から始まる。先付と八寸が静かに順を追って供される。旬の魚介を丁寧に扱った小鉢は、それぞれが一口のなかに季節を宿している。食材の多くは宮本と共通し、仕入れのひとつひとつに厨房の姿勢が映し出される。
うどんの出汁は淡く、澄んでいる。塩気は控えられ、旨みだけが舌のうえに静かに広がる。薬味は別皿で添えられ、手元で少しずつ整えながら食べる。かけうどん一杯のなかに、懐石の椀物に近い丁寧さがある。
昼は土日祝のみの営業で、かけ、あんかけ、釜揚げなどが用意される。夜は一品を重ねながらお酒とともに過ごし、〆にうどんを迎える。奥には個室もあり、改まった席にも応える。
出汁の香りとともに、時間がゆっくりと過ぎていく。